物語もスラム街で問題を起こした少年たちは20才を境いに殺処分されるという設定になっており、あまり気持ちの設定ではありません。 さらに大阪公演はISILによる後藤健二さん殺害。東京公演は戦後70年と憲法改正問題。 どちらも予期していない出来事であったにせよ、あまりにもタイミングが合いすぎていました。
私はこの作品が、インターネットで調べた最近のニュースではなく、20代前半の彼らが一から構成を考えて、自分たちのありったけの表現方法を駆使し
「大阪芸術大学・劇団開花雑誌」が2015年8月に開催された東京・シアターグリーン学生芸術祭Vol.9で
関西勢初となる最優秀賞を獲得しました。
主宰の村上如水くんを始め劇団開花雑誌に参加頂いたキャスト・スタッフ・関係者の皆さん、お疲れ様でした。そして応援してくださったすべてのお客様、ありがとうございました。
思えば9年前、東京と大阪のそれぞれの劇場で学生演劇祭を開催することが決まり、初めて東京から招致した学生劇団が、「慶應義塾大学・創像工房 in front of.」 脚本・演出は後にゴジゲンを主催し現在も映像の世界で活躍している松居大悟くんでした。 脚本や演出は勿論、スタッフワークからキャストのレベルまで、同じ大学生とは思えないほど関西の学生劇団との差に愕然としたのを覚えています。
あれから9年。。。東京・大阪両最優秀賞をようやく獲得することができました。
この「第三毒奏」という作品。東京でどう評価されるか?不安と期待がありました。
ご覧になられた方は分かると思いますが、生のキャベツを足で踏み潰したり、キャベツを生首に見立てて頭上から落としたりします。
た作品であるということを評価したいと思いました。
若い彼らにとって戦争や社会風姿などどうでもよくて、彼らが伝えたいのは大人たちに対する無力さと無関心、そして、社会に対して何も期待していないこと。
だからこそ、どんな状況下でも一生懸命だし、どんな状況下でも元気に愉しく踊り、狂い、そして恋もする。
だって今の彼らにはそれしかできないんだから。。。
演劇は自由な表現方法だと分かっていても、学生たちは不自由に作品を作っているように思います。
そして、不自由にしているのは私たち大人です。 表現方法の一つとして、間違いかもしれないけれど、批判覚悟で、そしてキャベツの匂いでキャベツが嫌いになるくらいキャベツを食べまくった彼ら行動は、まさに不自由からの脱却を試みた行為に見えました。
さて、今回のシアターグリーン学生芸術祭での最優秀賞は道頓堀学生演劇祭としてはまだまだ一歩を踏み出したに過ぎません。
また、次の世代の学生たちが新たな作品作りに励んでいます。
私たちは彼らに場を提供することしかできません。
そして、私たちは彼らを見守ることしか出来ません。 感性は学ぶものではなく感じるものだと私は思います。
自分に、世間に、未来に何を感じ何を伝えたいのか?
そして学生たちも飽食の情報社会の中で何を取捨選択していくか?
彼らの真っ直ぐな道を邪魔することなく、伸ばしてやりたいと思います。
さあ、2016年2月、道頓堀学生演劇祭Vol.9もご期待下さい。
道頓堀学生演劇祭 藤原治基